No.499◆8月定例会はテーマ2本立てでした

 

◇事務局・石川由紀が折々を綴っています。◇ 

 

8月17日(土)の第445回定例会は「『年金改正法』は社会保障制度を個人単位に近づけ得るか」でした。『単身けんニュース』197号の特集の深堀を、と思っていたのでしたが、例によって脱線しました。5年に一度の「年金法改正」が来年に迫り、厚生労働省やその審議に関わる方面からの情報が増え、私たち一般国民もこれからの収入戦略として自身の身の振り方を予想できるようになってきました。参加者の皆様にお訊きしたかったのは、期待する改革の項目は何ですか?でした。

 

1)「『第3号被保険者制度』と『年金制度』」(『単身けんニュース』197号)

 

「第2号被保険者(会社員・公務員等) 」の配偶者は保険料を納めなくても基礎年金を受け取れるという「第3号被保険者」制度があったり、税では年収が一定以下の配偶者がいると「配偶者控除」を受けられたり、企業によっては「扶養手当」が支給されたりと優遇制度があるので、これらの優遇制度内での収入に留めようと「第2号被保険者」を配偶者に持つ既婚のパート等の労働者たちが就業時間調整をするので、人手不足に陥る業界は頭痛の種とか。補充でそれを埋める方は不公平感が無いのでしょうか。

また、「第1号被保険者(農業・自営業者・学生等)」の配偶者には、この「第3号被保険者」制度は適用外ですから「年収の壁*」はありません。婚姻関係にあっても配偶者の職種によって労働条件や税制が異なっているのです。

 

*「年収の壁」とは、税金や社会保険の定昇となるボーダーラインのこと。規定の額を越えると税金や社会保険料の負担が大きくなり、手取り額が減少するラインを指す。

 

2025年の改革では、この「壁」が動くかのような報道がなされています。「昭和の標準家族」→雇用労働者の夫(妻)と専業主婦(夫)と子供2人、という"昭和モデル"が令和の現在では少数派になってきているからと理由付けられています。家事育児に掛かる時間は昭和期と今とでは大違い。「人生百年時代」と言われている時代に、生涯家事専業でいる立場って、ねぇ…。

 

2)「遺族厚生年金 子どもがいない夫婦の男女差なくす方向で検討へ」(7月25日『NHK NEWS WEB『』から)

 

―会社員などが亡くなった際に配偶者らに支給される「遺族厚生年金」について、厚生労働省は、共働き世帯が増えたことなどから受け取る要件の男女差をなくし、現役世代で子どもがいない人の受給期間は、性別にかかわらず、5年間とする方向で検討に入った。

 現状は、女性は、夫が亡くなった時に30歳未満だった人は5年間、30歳以上だった人は、生涯にわたって受け取れる。一方、男性は、妻が亡くなった時に55歳未満だった人は受け取れない。

 検討理由は、共働き世帯が中心となっている実態にそぐわないとして、男女差を解消する方向で検討に入った。

 改正の具体案には、配偶者が亡くなった時に60歳未満で子どもがいない人について、性別にかかわらずいずれも5年間受給できるようにとする方向。ただ、男女の就労環境には今も差があることから、妻の受給期間の5年間への短縮は段階的に行うほか、すでに受け取っている人は制度改正の対象としない方針とか。また、5年間の受給額を現行制度よりも増やすことも検討されているという。厚生労働省は、こうした案を審議会に示し、議論することにしている。

(太文字は石川)

 

戦後すぐの昭和期には、女性の「結婚」のことを「永久就職」と呼んでいました。それくらいに「家族依存型福祉国家」頃の専業主婦の仕事、家事・育児・介護は働き甲斐のある重要なポジションでした。昭和25年の「平均寿命」は、女性63歳・男性60歳だったそうですから、なるほどと。そして令和の「アラカン(ほぼ還暦)」と呼ばれる年代の方達のなんと若々しいこと! 審議会の委員の方達は何歳くらいなのか存じませんが、長い未来がある一人ひとりの人生を家族単位で設計しないで、個人単位の福祉社会でお考えいただけないでしょうか。5年に一度の年金改革。現状維持的ではなく、未来予測も加味していただきたいと切に願っております。

 

参加者の半数強がすでに年金を受け取っている会員でした。それで、というわけではないのですが、「一人暮らしの防災」を研究している方がゲストでいらしていたのと、地震・雷・急襲して来るゲリラ豪雨・長く続く線状降水帯・等々の今夏。なので防災の話と年金の話の2本立ての定例会となりました。