No.492◆「身寄り」に頼らない老活・終活を心がけませんか

 

◇事務局・石川由紀が折々を綴っています。◇ 

 

「多死社会」到来、というフレーズが聴かれるようになって、何年経ったでしょうか。「人生百年時代」と言われるようになったのですから、当然の予測でしょう。それを証明するかのように"引き取り手のない"ご遺体が増えて行政が四苦八苦しているというニュースを最近よく見るようになりました。

 

会員の消息の中でも「行旅死亡人」扱いになった知らせを聞きました。この方の場合は身寄りの特定が不明なので、と。しかし居住地の公的合祀墓に納骨後に、彼女は墓地を確保済だったことが分かったということですが、死後事務の契約が進行中だったとか…。

 

大都市の場合は、所属する事業所や団体・グループなどが無い人の場合、近隣といえども個人情報はほとんど知る人がいないのは容易に想像がつきます。「身寄り」や「死後事務受諾者」に辿り着くようにしておかないと、準備しておいた老活・終活に繋がらない場合が起ることになります。特にリタイア後は。

 

このようなケースの報に接する度、常々こんなお届け先があったらいいな、と思っていた条例が近年ニュースに出てくるようになりました。その先は自治体です。横須賀市の「私の終活登録」の報に触れたとき、「これですよ! 私が望んでいたのは」と拍手したことでした。横須賀市のHPを開けてみました。

 

「近年、ご本人が倒れた場合や亡くなった場合に、せっかく書いておいた終活ノートの保管場所や、お墓の所在地さえ分からなくなる事態が起きています。本市では、こうした"終活関連情報"を、生前にご登録いただき、万一の時、病院・消防・警察・福祉事務所や、本人が指定した方に開示して、本人の意思の実現を支援する事業を、平成30年5月から始めました。安心した暮らしのために、多くの市民の方にご登録いただきたいと思います」

 

続いて(本人の意思で、追加・削除も含め自由に選択できます)、

(1)本人の氏名、本籍、住所、生年月日

(2)緊急連絡先

(3)支援事業所や終活サークルなどの地域コミュニティー

(4)かかりつけ医師やアレルギー等、血液型

(5)リビングウィルの保管場所・預け先

(6)エンディングノートの保管場所・預け先

(7)臓器提供意思

(8)葬儀や遺品整理の生前契約先

(9)遺言書の保管場所と、その場所を開示する対象者の指定

(10)お墓の所在地

(11)本人の自由登録事項

 

私には実子が居ます。かなり頻繁に連絡を取っています。が、書面で終活のお願い項目まではまだ渡していません(計画はあるのですが作っていないので)。しかし、親の死に対処できない「子」は社会的に信頼を無くすのではないかと危惧しています。私の最後の子孝行は、「喪主」を託すことと、死後事務が滞りなく済ませるように準備することではと思っています。

 

「身寄り」が無い人への終活マニュアルが公的にも出てきましたが、このような項目は「身寄り」が居る人にも当てはまる項目ではないでしょうか。まだできていない私は参考にしている現状です。

 

エンディングノートは有料・無料でかなりの数の各自治体から発行されています。また、企業・専門家監修等々からも出ています。これは「終活の準備」であって、ゴールではありません。エンディングノートを書くことと、あなたの意志を誰に託すのかとは別問題です。自身の意志を託す人への項目は、上記の横須賀市の11の項目くらいは最低でも必要なのではないでしょうか。

 

何らかの「終活支援」策を採っている自治体は300程あるというレポートもウェブ検索で見かけました。あなたの、私の住む自治体での実態を調べてみませんか。そして当事務局へ教えていただけませんか。その情報を基に、公的機関に働きかけませんか。

 

本ブログ489号でお知らせしたとおり、政府は4月に「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」の作成に入りました。事業者の管理・指導も大切ですが、各自治体の基本姿勢の整備の方が先行されるべきではないでしょうか。公的な「終活支援」が脆弱か、無いか、で自律した高齢者が民間事業者を全面的に利用しなければならなくなっているのではと私は思っています。

 

「人生百年時代」です。子世代も「身寄り」も高齢者になっているかもしれない時代です。老活・終活を「身寄り」に頼る時代ではないと思いますが、いかがでしょう。