No.489◆「身寄りがない高齢者」とはどんな人? 問題ですか?

 

◇事務局・石川由紀が折々を綴っています。◇ 

 

単身けんの事務局をさせていただいて30余年になります。最近気になる見出しが「身寄りがない高齢者」という文字です。そこで「身寄り」を広辞苑で引いてみたら、「血縁のある人、みうち、親族、縁者」と出ていました。

 

私は終戦直前生まれですから、両親ともに行方不明という児童や、親族・縁者も引き取って育ててくれないという子供たちと同じ学校に通っていました。しかし、今でも「身寄りがないも同然」という子供たちがいるというニュースを聞きます。両親がいると判っていても、ネグレクトや両親の不仲・DV、「血縁のある人、みうち、親族、縁者」がいても「身寄り」として機能せず、施設で暮らす子たちがいます。この子たちにも「身寄りがない子供」というレッテルを張って、問題視するのですか。

 

私たち今の高齢者は、「標準家庭」で育った人が多数です。つまり戦後の国策「核家族」奨励の中で育ったので、"両親と未婚のきょうだい2人"の4人家族が基本型でした。成人すると、または結婚すると子は新しく「核家族」を創るというのが一般的な家族のスタイルでした。婚姻の如何にかかわらず高齢になると離別・死別は仕方のないこと、一人の成人として生きることになるのです。このスタイルは戦後日本が求めた家族像なのではないでしょうか。「身寄り」=「親子、血縁のある人、みうち、親族、縁者」に生活支援や介助・介護を頼れ、と言うのは少し違うのではないかと思うのですが。あの時から80年が経とうとしているのに…。

 

4月19日、内閣府孤独・孤立対策推進本部の第1回推進会議で「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」(案)が公開されました。そして厚生労働省は、「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(案)」に対する意見募集(パブリックコメント)を同日12:00より開始し、5月18日23:59に受付終了しました(担当:老健局認知症施策・地域介護推進課)。Web検索では、全国消費生活相談員協会(5月13日)、全国銀行協会(5月17日)、日本弁護士連合会(5月17日)、等々が意見書を出しています。 

 

「身寄りがない高齢者」を問題視し、「身寄り」を探してサポートをさせようとしていた政府や世論も、ようやく憲法第25条の「生存権」→「国民には生存権があり、国家には生活保障の義務がある」ということを履行してくれることにしたのですね。

 

「家族に頼らない生き方」を目指してきた単身けんの主張が一部かなうことでしょう。

 

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 日本国憲法第25条は、

 

(1)「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」

(2)「国は、すべて の生活部面について社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」 

 

と、規定している。