No.478◆「誰一人取り残さない」というけれど…

 

◇事務局・石川由紀が折々を綴っています。◇ 

 

最近というか、近年気にかかる言葉が私にはあるのです。それは政府や政治家、政策関係者からかなり頻繁に発せられる「誰一人取り残さない」というフレーズです。

 

例えばマイナカードの普及・実用化等実施計画等の説明・発表時には、その意義についての言説の最後には必ずと言っていい程、このフレーズが付いているように思うのは私だけでしょうか。私の場合、よちよちと付いて行っている振りはしていますが、利用は一度もしていないのです。マイナカードは持っていますし、スマホはAndroidなのでいつでもダウンロードして手続等がオンライン申請できる準備はできているのですが。公的健康保険などの紐付け申請もしていますがこれまで通りの日々を送っています。いざとなれば窓口の人に手取り足取り教えてもらって、制度に準じるつもりでいるというのが現状です。

 

私の周りでの話ですが、ほとんどの知り合いはこの私程度の様で、「あーぁ、私もみんなと同じだぁー。よかったぁー」と安心している今です。この制度を全国民が有効に利用する場合、「誰一人取り残さない」ために、どんな方策を行政はお考えなのでしょうか。見えてこないのですが、どなたか教えてくださいませんか。

 

この「誰一人取り残さない」というフレーズがいつから使われるようになったか検索してみました。どうやら2015年の国連総会で採択された「持続可能な開発のための目標(SDGs)」のようです。一例では、ユニセフのホームページで「"誰ひとり取り残さない" No one will be left behind ― すべての人のための目標の達成をめざし、もっとも脆弱な立場の人々に焦点をあてます」と。

 

では日本では、と探ってみたら一番目立ったのが、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局でした。そこには「地理的な制約、年齢、性別、障害の有無等にかかわらず、だれもがデジタル化の恩恵を享受することで、豊かさを実感できる『誰一人取り残されない』社会の実現を目指します。」と出ていました。そして「誰一人取り残されない」社会の実現に資する活動の周知・横展開として、「デジタルの日」の開催や、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」の実現に資する活動等を行う個人や団体への表彰等を通じ、社会全体のデジタルへの理解・普及や、事例の横展開等を進めます。」と書かれていました。

 

「誰一人取り残されない」? 「誰一人取り残さない」とはかなり意味が異なるのでは? 「取り残されている」側の目線として私は日本語訳では「誰一人取り残されない」の方を支持したいと思いますが…。