◇事務局・石川由紀が折々を綴っています。◇
1日の衆院予算委員会で岸田首相は、女性の就労抑制につながっているいわゆる「年収の壁(注)」について、「問題意識を共有し、制度を見直す。幅広く対応策を検討する」と答弁。もう今年度末すぐそこなのに今頃ですかと私は思ったのですが…。
昨年の6月14日の閣議で決定した男女共同参画白書に「家族の姿『もはや昭和ではない』個人単位の社会制度を」とあるのに対し、「さまざまな政策や制度が戦後の高度成長期のままとなっている」と現状を認めて、配偶者控除など各種制度を見直す必要があると提起したではないですか。あの時、少しは婚姻届の有無に関係なく、受け取る賃金が平等になると喜んだものでした。
単身けんは発会当初から「年収の壁」については問題視してきました。会員の中には配偶者を持たない人も多いです。また、専業主婦を前提とした「配偶者控除」だけでなく、年金制度など社会保障制度全般にわたって改正が必要です。例えば、厚生年金加入者の配偶者が保険料負担なしで年金を受け取れる「第3号被保険者制度」など、家族単位での保障のせいで婚姻関係にない者たちは労働条件の不平等に腹立たしい思いをしてきたことか。今もほとんど変わりがないと思いますが、これらの優遇措置のおかげで、年末の繁忙期に「就労抑制」をする女性の代わりに残業や休日出勤をせざるを得なくなり、不満と疲労と家族の冷たい目を長年経験してきたことか。
岸田首相も今回の言説の中で「女性の就労抑制につながっている現状を踏まえ、幅広く対応策を検討する」と申されていますから期待したいと思います。
しかし、値上げラッシュの今、人手不足の解消のためにも時給の引き上げが急務といわれています。そうするとますます「就労抑制」をする人が増えることにもなりかねないのではとの危惧も生じます。今流行りの言葉で言えば「どうする 総理」と言いたいところです。
性別を問わず育児や介護に関して休業制度があるようになりました。家庭と仕事の両立も図られるようになりました。家事についていえば支援先や支援ビジネスも多く存在しています。またそれら便利グッズも多彩に売り場に並んでいます。育児や介護、諸々の家事も、家族の中で処置・処理する時代ではないのです。性別役割分業を土台とした「昭和的」な生活習慣から抜け出す発想を国会議員の方々にもお願いしたいと思います。
(注)年収の壁=1961年に所得が一定以下の配偶者を持つ人に所得控除を認める配偶者控除ができた。1987年にパートなどで配偶者の収入が一定を超えると世帯全体で手取りが減る現象を解消するため、配偶者特別控除という制度ができた。配偶者の給与収入が103〜201万円の場合に控除が受けられる。150万円を超えると控除額が段階的に減る。両制度を修正するには所得税法などの改正の必要がある。
コメントをお書きください