「もしもの時に、少しは残しておきたいわ」「相続が争族にならないように遺言を」「認知症になったときのために成年後見人を」等々、いろんなご相談が寄せられます。それを23年間聞いてきた私の思うところは「転ばぬ先の杖を準備するのはいいけれど、杖を並べてどうするの?」です。
マスコミが話題にすると、すぐに自分の身に置き換えて心配をし始めます。
例えば「認知症になったらこんな事態が待っています」という報道特集
があったら、すぐに自分の場合はどうなるのかと考えてしまい、心配が
始まります。ある方はさっそく弁護士事務所を訪れ、説明を受けたと言
います。
私から見たら、生涯認知症にならないのではないかと思うほどの人で
す。ご両親やご姉妹にそのよう方がいらっしゃるわけでもないのです。
なのに、そのことが心配になって仕方ないから、任意後見制度を利用し
ようと思っていらっしゃるそうです。
私は本当に心配になってからでもいいのではないの、と言いました。
任意後見制度の契約をすると、後見認定が下りなくても、それを持続す
るだけで費用が発生します。その指定後見人さんが先にお亡くなりにな
れば、再度後見人の選定と契約が必要となります。もっと嫌なことを云
えば、プライバシーすべてを開示してしまうのですから、その方の言動
をチェックし続けなければなりません。ようするに支出と管理業務が生
じます。そのことでまた、心配・悩みが増えませんか。
その悩みを解決するために、任意後見人に監視人を付けることになり
ます。いつ契約が履行開始になるか分からないほど早い時期から、この
杖は必要な杖なのでしょうか。
私は成年後見制度をビジネスにしている弁護士さんや司法書士さん、
税理士さん、認定成年後見人を有する組織が発する情報を溜めておくの
は良いと思いますが、年々進化し、蓄積されるノウハウや、事件・事故
の情報を追収集し、本当に必要となる直前まで、契約はしなくてもよい
のではないかと思っています。
使わない杖のために、管理の手間や、買い替えの心配を増やすのは考え
物のような気がします。
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