単身けんに入会希望の人がまず発する言葉で多いのが、「私と同じ境遇の人はいらっしゃいますか?」。私の返答は「まずいらっしゃらないでしょう」。
ある女性の場合、同年代で、女性で、ずっと未婚で、年金生活で、持ち家で、都市暮らしで、一応生活が成り立っていて、一応元気で、兄妹は1人いて、親は他界していて、等々。
一つひとつの件については「私もよ」と言う人はいます。それが5件程重なる人もいます。では、お茶でも飲みながら悩みを打ち明け、お互い助け合いましよう、となると問題が露見してきます。なぜなら、環境が同じでも、抱えている不安や心配や不満が同じではないからです。「同じ境遇なのに、わかって
くれないのね」となり、仲良しさんになれなくなってしまうのです。
そんな例をたくさん見てきました。
私の持論は、「環境、境遇の異なる人からヒントを得ましょう」です。
「自分の想いは、自分と同じ境遇の人しか解かってくれない」と思い込
んでいると、その呪縛から抜けられないので、ますます考えは堂々巡り
をし、同じ境遇で、同じ不安なのに、「でもあの人は私より活動的だか
ら、いろいろ打つ手があるのよね」となり、同じ思いを共有するどころ
か、他者から見ると大差ない違いが気になって、違い探しのようになっ
てしまうという事態です。
ある方は、「同級生でお互い今はひとり暮らしなのに、話していると
合わないのよ。私はひとりぼっちで不安なのだけど、あの人
主人の兄妹がいるから・・・」と言うのです。
いまどき高齢の亡夫の兄妹と、仲良く行き来して助け合っているという
話はあまり聞かないのですが、彼女にとっては義理の兄弟がいるという
だけで、境遇の違いを感じてしまうようでした。
もう一歩踏み込んで聞いてあげると、その人は、日々の付き合いはない
のに年金の中から親類付き合いとしての冠婚葬祭の出費がたいへんだと
か、また違った話が聞け、それぞれ、いろんなことがあるのだと分かり、
見識が広がっていくのではないでしょうか。
違いがあることがお付き合いを遠ざけるのであれば、親しい人はでき
ないのではないでしょうか。同じ境遇・環境であっても悩みはそれぞれ、
と分かってあげることの方が、お互いの為になるのではないでしょうか。
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