「80歳を過ぎたら自由にしていただいています」という言葉を新鮮な驚きをもって聴いたのは25年ほど前のこと。場所は中国・河北省にある老人施設でした。
親善目的のツアーを10人ほどで組み訪中しました。当時親4人の入退院と、遠距離で付き合っていた私は、社会主義国の老人福祉の現場が見たくて、現地の世話人さんに特にお願いをして訪問をさせていただきました。
そのときかなりのお歳の女性がお昼寝中でした。「この人は86歳です。寝たい時に寝て、起きたい時に起きる。そして食べたいものを訊いてそれを食べていただいています。
こちらのスケジュールで生活をさせることはありません。その方が長生き
していただけると思います」とおっしゃいました。
私ははっとしました。私が4人の親に対してとっていた態度は、好き嫌い
を言わないで栄養バランスを考えて食べろ、昼寝をして夜寝られないとい
うことがないように規則正しい生活をしろ、散歩をしろ、等々、うるさく
言っていたのです。言わなくても模範的な生活をしていた親たちなのに、
です。
帰国後、ガラッと変った私の言動にびっくりしていました。いまでも変わ
れてよかったと思っています。
80歳を超えて尚、理想といわれている生活を続けていらっしゃる方は
多いと思います。それがご本人の生き方であればいいのですが、不快に
思われるようであれば、好きなようにさせてあげるのも、理想的なので
はと思っています。
独り暮らしはだらしなくなると心配する人もいますが、不衛生だった
り、近隣に迷惑だったりではないなら、自分流の生活をするのもいい
と思っています。
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