日本人の女性の平均寿命は、ほんの少し縮みましたが、86歳は
しっかりキープしています。昨日退会のお申し出がありました。
「もうすぐ87歳になりますので、死ぬ前に身辺整理をしておきた
いので」とのこと。この方は会報誌を楽しみにしていただいていた方
で、発足時からの会員です。
彼女は今「断捨離」中とか。有料老人ホームに入居するときにも
大「断捨離」をなさったそうですが、それでもどうしても手元におい
て置きたかった物が数々あったとか。中でも悩んでいるのが父上から
の手紙だそうです。その手紙は段ボール箱にぎっしりと言います。
父と娘の間にこれほどの数の書簡が取り交わされたと言う話に、私は
羨ましくもあり、感動もし、その絆の強さを推測することさえできま
せんでした。
箱いっぱいのこの手紙、彼女にとってはかけがえの無い宝物。
いつまでもどこまでもそばに置いておきたい品物です。これと何時離
れるか! 死の時までかと思ったら、死んでからも、と言います。
この父の教育思想、人としての思いは誰かに受け継いでもらいたい、
伝えたいと言います。子供はいないし、遠く離れた地に姪がいるだけ
といいます。
この宝物の「断捨離」、何かいい方法は無いものでしょうか。
無理に焼却すればその後の彼女の生きがいに影響することでしょう。
そんな彼女に私は冷たく言いました。「あなたの宝物は、姪御様に
とっては単なる手紙かもしれないから、ずっとあなたの傍に置いて
おいて、そのあとは姪御さんに処分を託したら?」
彼女は「引き継いでくれる子供がいないのは悲しいものですね」と
言いましたが、引き継がされる子供にとっては、その重みを共有する
ための充分な時間が無ければ、無理なことではないでしょうか。
この手紙の箱は紙だけの重さではなく、心と言う引継ぎですから・・・
物体の「断捨離」は簡単ですが、単なる物体にするまでの心の
「断捨離」にはつらい時間が要るようです。
(c) Meixue|ストックフォト PIXTA
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かねこ (土曜日, 13 8月 2011 15:28)
捨てるに忍びない手紙や文章。
PCができれば、ネット上に半永久的に漂わせておけるのになぁ、と
思いました。
その中の一文が、いつか誰かの目にとまり、その誰かの役に立つかも
しれません。
ヤブコウジ (日曜日, 14 8月 2011 10:24)
ほんとネット上に漂流させると言うのもありますね。
でも大量の漂流物が浮かんでいるというのもねぇ。
宇宙に漂う人工衛星のかけらを想像してしまって・・・
自費出版して、図書館などに寄贈するというのはいかが?
思いつきです。